第 6 章
清く正しい本棚の「設置編」
ver 1.00 (2019.11.28)

05111206.jpg

[戻る]  [目次を表示する]  [第5章「塗装編」へ]  [番外章「資料編」へ]



 6-1.本棚の設置方法

   丹精込めて作り上げた本棚を、初めて自分の部屋に運び込む。その時の喜びは、その
  本棚を自作した人にしか味わえない感激であろう。いよいよ今日から、あなたと「清く
  正しい本棚」との、長い長いお付き合いが始まるわけである。

 ■ 裏板に完成年月日を!

   所定の場所に本棚を設置する前に、我々にはやらねばならぬ「崇高な儀式」がある。
  本棚の裏板にマジックで「完成年月日」を記入することだ。

   「そんなの、本棚を使い始めたら見えなくなるじゃん?」だとか「記念写真はさっき
  スマホで撮ったしぃ…」だとか、そ〜ゆ〜考え方は「無粋」というものである。本棚に
  限らず「モノを自作する」という行為は、その完成品のどこかに心静かに完成年月日を
  刻むことで初めて完結するものであり、これを怠ることはまさしく「画竜点睛を欠く」
  ことに等しいのだ。
01111814.jpg
裏板に記入した完成年月日

   もしもあなたが既婚者なら、あなたが苦労して本棚をこしらえたその過程をご家族の
  皆様も当然ご承知のはずである。ひょっとするとある人は、棚板の端を支えてくれたり
  裏板の貼り付けを手伝ってくれたかも知れない。そんな場合は、是非その人のお名前も
  本棚の裏板に「製作協力者」として書き加えておくことにしよう。夫婦円満、家族団欒
  そこに刻まれた名前は、その人にとってもきっと良い思い出になるだろうと私は思う。

 ■ 本棚の「耐震考慮」の基本的な考え方

   自作本棚が完成した喜びに浸りつつ、その本棚に実際に本を並べ始めた時点で、当然
  ながら我々の次の関心は「本棚の耐震考慮」になるだろう。

   ご存知の通り、日本は「地震国」である。日本列島ならぬ「地震列島」という言葉が
  あるほどで、今日も日本中のどこかで誰かの足元の地面が揺れているのである。新聞や
  テレビのニュースは各地で起こった地震被害の状況を詳しく伝え、どこそこでは何人の
  方々が生き埋めになり、どこそこでは何人の方々がお亡くなりになりました…なぁんて
  報道を見聞きしてしまうと、今、自分の目の前にそびえ立つこの自作本棚が、これまた
  今すぐにでも倒れてくるような気分になるのは仕方のないことである。

   特に我々が自作した本棚はその全高が天井に届くほど「高く」、しかもその奥行きは
  必要最低限に「薄い」ときている。これら特徴をして、万人に共通する一般的な見解は
  極めて「不安定」かつ「倒れやすい」ということに尽きるだろう。

   しかしながら、ここで私があえて強調しておきたいこととは、実は我々が作った清く
  正しい本棚は、それ自体、決して「不安定」な本棚ではなく、また「倒れやすい」本棚
  でもない!という事実である。なぜなら、背が高くて薄い本棚は、その本棚が「高くて
  薄い」という理由だけで倒れるモノでは決してないからだ。なんだか「禅問答」の如き
  物言いだが、この基本的な考え方だけは最初にしっかり押さえておいて頂きたい。

   これは自分で本棚を作った人なら「事実」として実感出来ることだと思うが、我々の
  本棚は「空」の状態でもズッシリ重く、置いただけで部屋の真ん中にしっかり「直立」
  するのである。床が「水平」ならグラつくことなど皆無であり、まるで本棚が床に根を
  張ったかのごとくドッシリしているだろう。本を収納すれば全体がますます重くなって
  ちょっとやそっとの衝撃では決して倒れることはないはずだ。

   これまでにも繰り返し述べてきたことだが、我々の作った本棚とは、清く正しい建具
  職人が最高の直角精度で切り出してくれた正確な材料を、木ネジを使って力一杯に締め
  上げて作成したものである。正確な「直角の材料」を正確に「直角に締め上げた」わけ
  だから、出来上がった成果物の全体もまた、正確な直角になるのは「当然の結果」だと
  いうことになる。

   私は決して、自分の本棚作りの腕を「自慢」しているわけではないのである。今まで
  述べてきたことは誰が作った本棚にも当てはまることであり、木工技術の「巧拙」とは
  まったく関係のないお話だ。あえて言うなら「水平な床面に直角の物体を置くと、その
  物体は必ず直立するはずである」という、純粋に「幾何学」のお話だろうか? そして
  誤解を恐れずに申し上げれば、そういう状態で床面に「直立」している本棚は、それが
  床面に「直立」している限り、特段の「耐震考慮」は必要ないと言っても過言ではない
  と私は思うのである。

   ちょっと、下の写真をご覧頂きたい。これは近年、私が自宅の廊下に増設しつつある
  奥行き145ミリの「コミック専用棚」である。全高は2270ミリ、全体で10段の
  棚を有する本棚だが、さて、私はこの本棚に対して、どういう「耐震考慮」を行なって
  いたでしょうか?(^_^)
090927010.jpg
廊下に並べたコミック専用棚

   答えは「何もしていない」が正解である。信じられないかも知れないが、作った本棚
  5本を、そのまま廊下の壁に沿って「ただ並べてあるだけ」だったのだ!

   設置場所が「廊下」という特殊条件であり、普段は私以外の人間は滅多に通らぬ場所
  でもあり、万が一地震で最悪本棚が倒れることがあったとしても、狭い廊下の反対側の
  壁に引っ掛かれば「全壊」することもないだろう…、そういう屁理屈で、あとで述べる
  耐震考慮を一切施すことなく、ついつい手抜きを決め込んでしまったというわけだ。

   すでにこの状態で数年以上の月日が経ったが、これまでのところ、この本棚が倒れた
  ことは一度もない。かなり大きな地震も何度か経験したはずだが、全体として微動だに
  していないのである。決して「褒めた話」ではなく、どなた様にもお勧めするわけには
  いかないが、我々の本棚の「安定性」を如実に示す一例としてご紹介しておきたい。
 << 後日談 >>
   長い廊下に「ただ置いて並べただけ」で17年。実はその期間の経年変化で本棚材料に  
   乾燥と収縮が進行し、隣同士の本棚の間にごくわずかな隙間が生じてしまった。本棚を
   前面から力一杯押すとほんの少しグラつくようになったので(^_^;)、慌ててこの廊下の
   漫画棚にも「耐震工事」を施した。その時の様子は次のツイートをご参照願いたい。

        → Togetter「廊下の漫画棚の耐震工事」

 ■ 本棚が倒れる理由

   我々が作った本棚が想像以上に「安定している」ことは、先に述べた私の悪い例でも
  ご理解頂けたと思うが、さて、それならば逆に、我々が作った本棚が不幸にも「倒れて
  しまう」のは、一体どういう状態になった場合だろうか?

   この問題についてご説明したのが、以下に示す「3本の本棚」の図である。図(A)〜
  図(C)の、3本の本棚がある。各本棚の中心付近には「重心」があり、そこから鉛直に
  伸ばした線が「矢印」で描いてある。これら3本の本棚のうち、実際に「倒れている」
  本棚はどれだろうか?
cogravity.jpg

   答えは図(C)の本棚だけである。図(A)の本棚は「直立」しており、図(B)の本棚は
  「まだ」倒れていない。ここまで書けば、中学校の理科の授業で習った有名な「ピサの
  斜塔」を思い出す人もいるだろう。

   ご名答である。本棚が水平な床の上に直立している時、その本棚の「重心」を鉛直に
  伸ばした点は、図(A)のように、必ずその本棚の底面の範囲内に位置している。この時
  本棚全高が高かろうが低かろうが、奥行きが深かろうが浅かろうが、この位置関係には
  まったく違いがない。そしてたとえその本棚が傾いたとしても、図(B)のように、重心
  から鉛直に伸ばした点がその底面の範囲内に収まる限り、その本棚は決して倒れないと
  断言出来るのである。

   本棚が倒れるのは、図(C)のように、重心位置がその本棚の底面を外れた時だけだ。
  逆に言うと「重心を移動させない」ことが可能ならば、我々の本棚は「ピサの斜塔」と
  同じく数百年間でも「直立」し続けることになる。つまり、本棚が倒れないようにする
  ためには、本棚の「重心を移動させない」工夫が必須条件というわけだ。

 ■ 重心を移動させない固定方法

   本棚の「重心を移動させない」工夫とは、実はそれほど難しい工夫ではない。簡単な
  方法とは、本棚の要所要所を下の写真のような「L字型金具」で固定することだ。この
  L字型金具は、どのホームセンターでも「4ケ100円」程度のお値段で売っている。
08080204.jpg
L字型金具、4ケで100円

   このL字型金具を使って、実際に本棚を固定してみたのが下の写真(左)である。固定
  位置は下段の本棚の高さである1820ミリ近辺、ちょうど部屋の鴨井のあたりが良い
  と思う。この際、自分が一生懸命に塗装した本棚の側板に金具を「ネジ止め」するのは
  いささか勇気がいることだろうが、ここは思い切って「決行」すべきである。本棚とは
  あくまでも「実用品」であり、これを正しく機能させるためにはこういうストイックな
  割り切りが必要なのだ。前述した私の悪い例のように、ゆめゆめ耐震考慮を怠ろうなど
  とは決して考えないことである。
06031907.jpg
06031908.jpg
実際の固定方法の一例
こんな使い方も出来る

   なお、このL字型金具は、上の写真(右)のように180度ひっくり返して取り付ける
  ことも可能である。本棚の位置に応じて2種類の方法を使い分ければ良いだろう。

   読者の中には、「重たい本棚を固定するのにこんな小さな金具だけで大丈夫か?」と
  心配する人がいるかも知れない。確かに、この金具にワイヤーを繋いで本が満載された
  本棚を上からクレーンで「釣り上げる」のなら、こんなチャチな金具では到底保たない
  だろう。しかしながら、我々の目的は本棚を上空に釣り上げることではなく単に本棚の
  「重心を移動させない」ことだけなのだ。この金具で本棚1本につき左右1ケづつでも
  止めておけば、強度的な心配は「まったくない」と言って良いだろう。このことは私の
  過去25年間の経験からも十分に保証出来ることである。

 ■ もう少し本格的な固定方法

   L字型金具を使わず、もう少し本格的に本棚を固定したいと言うのなら、下の写真の
  ように少し大きめの金具を使う方法がある。タバコの箱と較べれば一目瞭然だと思うが
  この金具はかなり大型だ。それもそのはず、この金具の正体は壁面に棚板を取り付ける
  時に2本1組で使う「棚受け金具」と呼ばれるモノなのだ。こちらはホームセンターで
  ちょっとお高い「1ケ数百円」程度のお値段で入手することが出来る。
08080202.jpg
ちょっと大型、棚受け金具

   棚板の荷重を下から支えるために作られたこの「棚受け金具」を使用すると、非常に
  強力に本棚を固定することが出来る。しかも、本棚を固定する時には、この独特の形を
  した「装飾部分」を水平に使うことにもなるので、チョイとしたものを吊しておくのに
  とても便利なのだ。独身時代の私は、この部分によく洗濯物などを干していた(^_^;)。

   なお、後述するが、この大型金具は本棚を「コの字型」に並べる場合など、何らかの
  事情で本棚を「壁から離れた位置」に固定しなければならない場合に特に大きな効果を
  発揮する。L字型金具では壁からの長さが足りず、本棚を十分に固定出来ない場合は、
  この棚受け金具を積極的に使えば良いだろう。

 ■ 壁面への直接固定方法

   本棚を壁面に直接固定してしまう場合には、裏板を通して「木ネジ」を壁に直接ねじ
  込むことになる。コンクリート壁の場合や賃貸住宅などの場合は、ちょっと採用し難い
  方法かも知れないが、ご自宅を新築する際などには是非とも検討してみる価値があると
  思われる。私自身、前述した廊下のコミック専用棚は別としても(^_^;)、自分の書斎に
  置いた本棚は現在ではすべて壁面に「直接固定」しているのである。

   ねじ込む木ネジの本数は棚1段につき2本を基準とし、ねじ込む場所は本棚上部から
  3段目ないし4段目程度にしておけば十分だ。つまり、本棚1本あたりに6本〜8本の
  木ネジを「分散」して固定するわけである。こうすれば、あなたの本棚は壁とほぼ一心
  同体となって、極めて強い耐震効果が期待出来ることだろう。

   この方法で本棚を固定する時に注意すべきこととは、裏板を通してねじ込む木ネジが
  きちんと壁の中の「桟木」まで達しているか?ということである。せっかく壁面に穴を
  開けるのだ。木ネジが壁の石膏ボードを突き抜けただけで効いていないとなると、一体
  何のために「直接固定」を採用したのか判らなくなる。壁の中の「桟木」は、金づちで
  壁面を軽く叩けば比較的容易に見つけられると思うが、万全を期す人なら写真のような
  下地探しの「専用ツール」を使うと良いだろう。
08081303.jpg
08081302.jpg
商品名は、下地探し「どこ太」
先端の「針」を突き刺す

   このツールは、先端を壁に押し付けると中から「針」が飛び出す仕掛けになっており
  壁の「下地」を簡単に探すことが出来る。針が壁の中の「桟木」にブチ当たると確かな
  手応えを感じるから、その部分をめがけて木ネジをねじ込めば良いのである。そんなに
  高い道具でもないので(数百円)、1本買っておけば何かと便利だと思う。

 ■ 本棚の「上下」連結方法

   我々の本棚は「上下2段構造」になっているため、この「連結方法」についても検討
  せねばなるまい。ただし、ここでも「横着」を決め込むようで恐縮だが(^_^;)、過去の
  私の長い経験では、下段の本棚さえしっかり固定しておけば、実は上段は「ただ載せて
  あるだけ」状態でも意外に大丈夫なことが多かった。これは上下本棚がお互い「面」で
  接しているために、中に本を入れてしまえば、そこには想像以上に強力な「摩擦力」が
  生じるからに他ならない。

   その前提で上下の連結を考えるなら、下の写真のような金具を使って、上下の本棚を
  ネジ止めしておけば完璧だと思う。見栄えを気にする人なら、上段の本棚の底板の方に
  上からネジをねじ込んで上下を連結する方法もあるだろう。地上高1820ミリ以上の
  高さに打つネジならば、決して普通の人の目には映らないはずだからである。
06031910.jpg

   なお、前述した壁面への「直接固定」を採用した場合は、上段の本棚も壁に直接固定
  するはずだから、それ以上は上下の本棚の連結について悩む必要はないだろう。
01111808.jpg
01111815.jpg
01111816.jpg

   これまで述べてきた通り、本棚の固定方法のポイントとは「重心が移動しないために
  必要な工夫をする」ことであり、逆に言うと「重心が移動しなければ必要十分」という
  ことである。地震などの「大自然」の力は決して舐めてはいけないが、さりとて病的に
  神経質になる必要もないと私は思う。要は「バランス感覚」が重要だということだ。

 ■ 和室に置く場合

   これまでのご説明は本棚を「洋室」に置く場合を想定して書いてきたが、本棚を置く
  部屋が「和室」の場合には、その設置方法には注意が必要である。と言うのも、和室の
  「畳」というヤツはその構造上「縁部」よりも「中央部」の方が弱く、上からの荷重に
  対して簡単に「沈んで」しまうからである。

   ご存知の通り、本が満載された本棚というものは非常に重く、これを畳の上に置くと
  盛大なる「沈み」が発生してしまう。ただし、この沈みは畳の「縁部」と「中央部」で
  同じようには発生せずに、大抵は「中央部」の沈みの方が「縁部」の沈みよりも大きく
  なる傾向にあるため、結局のところ本棚全体が「前方に倒れて来てしまう」のだ。

   この現象を防ぐためには、和室の壁に沿って本棚を並べる時、あらかじめ本棚下部を
  5〜10センチ程度、壁から離して置くようにすると良い。そして、本棚の全体を若干
  後方に傾けてやることで、本棚を壁に「もたせかける」ようにするわけである。

   この時、本棚下部をどの程度壁から離して置くかは思案のしどころである。さっきは
  5〜10センチ程度と申し上げたが、私の経験では、かなり「思い切って」傾かせても
  大丈夫だった。会社の独身寮に住んでいた頃は部屋の畳が比較的柔らかく、10センチ
  以上離して置いていた時期さえあったように記憶している。とにかくこの辺はあなたの
  お部屋の畳の堅さに応じて、ある程度「フィーリング」で決めて頂きたいものである。

   いずれにせよ、本棚を傾けることで、本棚側板の前方下部には「くさび状」の隙間が
  空くから、この部分には何か適当な「詰め物」をしなくてはならない。新聞の折り込み
  広告などを細長く折って使うことが多いとは思うが、出来ればこの「詰め物」は隙間に
  合わせた「テーパー状」になっていると大変好都合である。どこのご家庭にでもあって
  本棚下部の詰め物として適当なモノとは一体何か? …それは「割り箸」である。
08080351.jpg
割り箸で作った「詰め物」

   写真のように、未使用(新品)の割り箸を2膳か3膳、同じ向きに揃えてセロテープで
  固く縛る。これだけで出来上がりだ。場合によっては割り箸を適当な長さに折り揃えて
  から縛っても良い。一度作れば何年でも使えるはずだ。こうして作った詰め物を、本棚
  棚板の前方下部に突っ込む。この時、割り箸の先端が本棚下部から飛び足してしまうと
  あとで足を引っ掛けて大怪我をすることもあるから注意が必要だろう。

 ■ 和室の本棚の耐震考慮は「いつ」施すか?

   なお、和室に設置した本棚に「耐震考慮」を施すのは、その本棚に本を満載したあと
  畳が十二分に「沈んだ」ことを確認したのち行なうべきである。設置した直後の本棚を
  慌てて金具などで固定してしまうと、その後の1〜2ケ月で本棚が畳に深く沈み込んで
  せっかく固定した金具に無理な力がかかることにもなりかねない。沈みが1〜2センチ
  程度に達することは良くあるお話なので、本格的な「耐震考慮」を施すのは本棚を設置
  したのち十分な「様子見」の期間を取って、畳の「沈み」が完全に止まったことを確認
  してからでも遅くはないと私は思う。


 6-2.本棚の電装方法

   自作本棚を部屋の中に設置する時には、いわゆる「電気コード類」の配線についても
  考えておく必要があるだろう。壁に沿ってテーブルタップを這わせたり、本棚の内部に
  ラジオやステレオなど電化製品を置きたくなる場合もあるはずだ。ここでは、本が満載
  された本棚にまつわる「電装方法」について述べてみたい。

 ■ 本棚の「裏」にコードを通すには?

   コンセントからテーブルタップを伸ばしたり、アンプからスピーカーケーブルを引き
  回したりする時には、それら電気コードを本棚の背面に這わさねばならない場合が出て
  くるはずである。しかし我々の本棚は実用に徹したムダのない構造をしており、これを
  壁にピッタリ寄せていると、コードはおろか「アリの子一匹」通れる隙間もないほどで
  ある(もちろん大袈裟である(^_^;))。

   唯一残る空間は「ハカマ」部分の裏側であって、本棚の裏側に電気コードなどを通す
  場合には、この部分の空間を有効利用するのが一番カンタンな方法だと思う。そのため
  にはあらかじめ、棚板下部の「角」部分をノコギリで欠き取って、壁面に沿うコードを
  逃がす必要があるだろう。一生懸命こしらえた本棚の一部をノコギリで欠き取るなんて
  とても出来ることではないかも知れないが、これもまた、本棚を「実用品」として扱う
  ために必要不可欠な試練なのだ…という前提で、お話を進めさせて頂くことにする。

   この時に使用するノコギリは、目が細かい「七寸目」と呼ばれる刃のノコギリが実に
  使い易いので「超お勧め」である。このノコギリを使って落ち着いて切れば、自分でも
  驚くほど綺麗に側板の角を欠き取ることが出来る。まるで最初の「設計時」からあった
  ような欠き取りである。

   しかし、この側板はあまり大きく欠き取る必要はまったくなくて、電気コードを1本
  通したいならおよそ「5ミリ角」程度、3本以上通したい場合でも「10ミリ角」程度
  欠き取れば十分だと思う。この時の様子は、下の写真をご参考にして頂きたい。
01111812.jpg
090927004.jpg
側板下部の「角」を欠き取る
これでコードを通せる

   ひとつだけアドバイスしておけば、不幸なる失敗で、仮に「20ミリ角」近く側板を
  欠き取ってしまったとしても、決して悲観だけはしないことである。その程度の失敗は
  誰にでもあることだし、この欠き取りは本棚の一番奥の部分だから、コードさえ通して
  しまえば「ほとんど」目立たない。隣にもう1本、別の本棚を並べるなら、なおさらで
  あろう。むしろ「何本でもコードを通すことが出来る」と、前向きに考えることだ。

 ■ 本棚の「中」にコードを引き込むには?

   一方、本棚の中、すなわち、ある特定の棚板の上にスピーカーなどの電化製品を置く
  場合には、本棚の「外部」からそれらコードを本棚の「中」まで引き込む必要がある。
  部屋の壁と裏板との間に隙間がある場合は、本棚の裏板に穴を開けてそこからコードを
  引き込むことも可能だが、本棚が壁にピッタリひっついている場合は、コードは側板の
  外方向から棚の中に通すようにせねばならない。

   この場合、引き込み用の「穴」を開ける位置は、コードを引き込む棚の段の一番奥の
  部分、それも天板のすぐ下の角あたりが「ベストポジション」だと思う。言葉では説明
  しづらいので、下の図をご参照願いたい。
cableholes.jpg

   この位置にコード引き込み用の「穴」を開ければ、そこからコードを内部に引き込む
  ことは容易いはずである。横に並んだ複数の本棚の端からコードを通す場合は、並んだ
  本棚すべての両側板の同じ位置に穴を開け、そこにコードを「貫通」させれば良い。

 ■ 本棚に「スピーカー」を入れよう!

   以上の手法を駆使すれば、本棚の中にスピーカーを入れて、外部からケーブルを繋ぐ
  ことも可能である。私には「オーディオ趣味」もあるので、自宅のスピーカーを本棚の
  中に埋め込んで、いつも身近にステレオ音楽を楽しんでいる。
08081901.jpg

   上の写真は、私の部屋のスピーカーである。スピーカー本体は210ミリの本棚から
  数センチ飛び出ているが、実用上はまったく問題がない。ここにお気に入りフィギュア
  など並べてあるのは、ちょっとした「元祖オタク親父」の嗜みである(^_^)。

   スピーカーに繋いだケーブルは、隣の本棚の同じ高さの棚の中を貫通して、一番端の
  本棚の側板から外に飛び出している。そこは部屋の隅に「L字型」に本棚を並べてある
  場所だから、スピーカーケーブルは一旦そこから床に伸びたあと、そのまた隣の本棚の
  ハカマ部分をくぐり抜けて、ステレオアンプの端子に繋がっているのである。

   スピーカーを収めた棚は、本棚の下から数えて4段目の棚である。椅子に座った時に
  ちょうど耳の高さ(120センチくらい)にスピーカーが位置することになって、これは
  音楽を聴くのに非常に都合が良い高さである。しかも、本棚にスピーカーを埋め込んで
  使うと、満載された本の背表紙が並んだ本棚の全体が、あたかも「無限大バッフル」の
  ような働きをしてくれる。文字通り、小さな「ブックシェルフ型」スピーカーが巨大な
  本棚スピーカーに化けるわけで、ステレオの音にも俄然迫力が出ようというものだ。

   本稿はスピーカーの「セッティング方法」について論ずるものではないが、自作本棚
  ならこういう芸当もあなたの「工夫次第」だと言うことが出来る。是非とも、あなたも
  壁一面の本棚から思う存分スピーカーを鳴らしてみて欲しい。

 ■ ハカマに「電源コンセント」を付けよう!

   本棚のハカマ部分には、100ボルトの「電源コンセント」を取り付けることも可能
  である。ホームセンターで「露出型コンセント」と呼ばれる器具を買って来て、これを
  ハカマの適当な位置に取り付ければ良い。電源コードは、ハカマの裏から下をくぐらせ
  側板の欠き取り部分から取り出して、その先を普通の壁コンセントに差し込んである。
  要するに、テーブルタップの「差し込み口」をハカマに固定したようなモノである。

   この「ハカマコンセント」はとても便利である。ちょっとした電源を取りたい時には
  非常に重宝する。我が家では、夏は扇風機、冬はファンヒーター、たまに電気ドリルや
  デジカメの充電器、ごくまれに(必要に迫られて)掃除機など、1年を通じてこのハカマ
  コンセントが大活躍だ。あなたにも、是非ともお勧めしたいアイテムである(^_^)。
00061001.jpg
08081301.jpg
本棚「外部」から電源を供給
ハカマに取り付けたコンセント

   ただし、実際にこの「ハカマコンセント」を取り付けたいと思うなら、厳密に言えば
  その行為は「電気工事」の範疇に入るので、施工には専門の「免許」が必要となる点に
  注意しておきたい。スイッチやコンセントなど配線器具を取り付けたり、それに電線を
  接続したりする作業を行なうためには、「第二種電気工事士」免許が必要なのである。

   前述の「露出型コンセント」の取り付けなら無免許でも可能と言う人もいるが、正確
  にはこれも既存設備の「交換のみ」可であって、残念ながら「新設」は該当しないよう
  である。最初から純粋に「製品」として売っているテーブルタップを買って来て、その
  差し込み口をハカマに固定する程度なら問題ないだろうと(私は)思うが、気になる人は
  電気屋に相談してみれば良いだろう。


 6-3.規格化された本棚の並べ方

   ここまでは本棚の「固定方法」や「電装方法」について述べてきたので、次は本棚の
  様々な「並べ方」について考えてみることにしたい。自作した本棚をあなたのお部屋に
  どのように並べるか? あれこれ悩みながら考えるのは、実に楽しいひとときである。

 ■ まずは「2本」の並べ方

   まずは基本的な並べ方として、最初にこしらえた2本の本棚を並べてみる。下の図は
  ごく一般的な「6畳間」の片隅に本棚2本を並べた時の様子である。ここでは畳1枚の
  大きさを「85センチ×170センチ」前後と想定しているが、これは私の自宅の畳の
  実測値である。日本全国のご家庭の畳がこの大きさというわけでは決してなく、さらに
  多くの場合、同じ部屋の中でも畳の大きさがバラバラということも有り得るから、この
  この図はあくまでも「イメージ図」だと考えて頂きたい。
f6bk02a.jpg
f6bk02b.jpg
図(A) 一辺の壁に2本を並べた
図(B) 部屋の隅にL字型に並べた

   図(A)は、一辺の壁に素直に2本を並べている。6畳間の長辺のおよそ1/3程度を
  本棚2本が占める感じになる。最も「ふつ〜」の並べ方だと思うが、これでは壁に窓が
  ある場合などに、そこが埋まって都合の悪い場合もあるだろう。

   これに対して図(B)は、2本の本棚を部屋の隅に「L字型」に配置したものである。
  ご覧のように、2本の本棚が、なんとか「畳半畳分」のスペースに収まることが判ると
  思う。2本が接する部分(ちょうど部屋の角の部分)は「中空」になるため、その空間が
  ちょっとムダになるような気がしないでもないが、な〜に、ここは僅か210ミリ角の
  スペースだ。部屋全体から見れば大したムダでもないだろう。むしろ、図(A)に較べて
  本棚2本が(辛うじて)「畳半畳分に収まる」ことのメリットの方が大きい場合もあると
  思われる。会社の独身寮に住んでいた頃、私は好んでこの「L字型」を使っていた。

   この「L字型」配置を採用する時は、片方の本棚の側板(側面)を、もう片方の本棚の
  側板(前面)に、ほんの少しだけ「引っ掛ける」ようにすると良い。こうすれば、2本の
  本棚のうち少なくとも1本の片方はしっかり固定されることになり、2本の本棚は全体
  として倒れにくくなるはずだ。

   なお、前述した「中空」スペースは、本棚を固定したあとは文字通り「天井まで届く
  煙突」みたいな空間になってしまうから、何かの拍子に本棚の天板近くからモノなどを
  下に落とすと大変なことになる。落としたモノは金輪際取れなくなるだろうから、心配
  ならボール紙などで「煙突にフタをする」工夫も必要となるだろう。

 ■ 本棚を増設して「4本」にすると…

   人生で初めて2本の本棚を並べると、その後しばらくは十分な本の収納量を味わえる
  はずだと私は思う。600ミリ幅で上下8段棚の「清く正しい本棚」は、単純計算でも
  1本が4800ミリの棚板を有しているわけだから、それが2本なら実に10メートル
  近い棚板寸法となって、それだけでもざっと1000冊近い本が収納出来る場合もある
  だろうことは以前にも書いた。

   …しかし、人生は長く、本は増え続けるのである(^_^;)。

   2本の本棚から本が溢れそうになって来た頃、我々は再び「清く正しい本棚」を2本
  増設して4本にするだろう。私の場合、結婚して長女が生まれたすぐの頃に、4畳半と
  6畳間だけの狭い社宅の片隅で、泣き叫ぶ長女を尻目にこの「本棚倍増計画」を実行に
  移した思い出がある(^_^)。
f6bk04a.jpg
f6bk04b.jpg
図(C) 3本×1本のL字型タイプ
図(D) 2本×2本のL字型タイプ

   上の図(C)と図(D)は、先の図(B)「L字型」を延長したパターンである。図(C)は
  本棚3本が並ぶ長辺側がちょっとした壮観になるだろうし、図(D)なら本棚の反対側の
  部屋の角に机を持って来ると「振り向けば本棚」という感じになって、使い勝手も大変
  良さそうだ。

   本棚4本の場合、ちょっと面白い配置方法が下の図(E)である。ご覧の通り、4本を
  「コの字型」に並べる方法だが、この配置の場合は、本棚4本がおよそ「畳1畳分」の
  スペースに収まる(かも知れぬ)感じになるのがミソなのだ。部屋のどこかに「床の間」
  みたいなスペースがあれば、ちょっと検討してみても良さそうな配置方法である。私の
  場合、転勤して社宅を出て「ぼろ家」に転がり込んだ最初の頃、3畳の納戸を勉強部屋
  と称して、その一方の壁をこの「コの字型」本棚ゾーンにしていた時期がある。
f6bk04c.jpg
図(E) 4本を「コの字型」に並べる

   前述した通り、各ご家庭の畳の大きさにはバラツキがあるから、4本の「コの字型」
  本棚がいつでも床の間や3畳の納戸にジャストフィットするわけでは決してない。幅が
  余る場合は「儲けもの」だが(本棚1本を、壁から離して置けば良い)、僅か数センチの
  違いで泣く泣く「コの字型」を諦めねばならない場合だってあるだろう。ただし、この
  段階で「コの字型」配置にこだわるあまり、あとから増設する本棚2本の寸法を最初に
  作った本棚2本と違う寸法で作ることだけは、絶対に避けた方が良いと私は思う。なぜ
  ならすでに本棚4本のオーナーであるあなたのような場合には、将来的には九分九厘の
  確率で、さらに後年本棚を増設するだろうことは想像に難くないからである。

   自作本棚である清く正しい本棚の「真の素晴らしさ」とは、将来的に本棚を増設して
  いく過程で、規格化されたまったく同じ外観寸法の本棚を、自由に組み合わせして配置
  出来る…というその一点こそにある! たかが本棚4本くらいの段階で、この「規格化
  された外観寸法」という最大のメリットを捨て去ることは決して得策ではないだろう。

 ■ さまざまなバリエーション

   ここから先のバリエーションは、皆さん1人1人の人生によって、様々な本棚の配置
  方法が考えられることになる。基本的には、「まったく同じ外観寸法の本棚」を次々と
  追加配備していくわけだが、以下がその並べ方として考えられるバリエーションだ。
f6bk05a.jpg
f6bk05b.jpg
図(F) 3本×2本のL字型タイプ
図(G) 本棚5本のコの字型タイプ

   本棚5本の場合の一例が、上の図(F)と図(G)になるだろう。私の場合、前述3畳の
  納戸ではさすがに手狭になって、ようやく「ぼろ6畳」を我が城とした頃に、図(F)に
  あと1本の本棚を加えるような形で頑張っていた記憶がある。あの頃はまだクーラーも
  付いていない部屋で、夜中でも汗水垂らして本を読んでいたっけなぁ?(^_^;)

   下の図(H)と図(I)は、本棚7本の場合の一例である。さすがにもう、このあたりの
  段階までくれば、自他ともに認める「蔵書家」の仲間入りであろう。お友達を呼んだ折
  など、本棚から大好きな本を取り出して話題が尽きないはずである(^_^)。
f6bk07a.jpg
f6bk07b.jpg
図(H) 4本×3本のL字型タイプ
図(I) 本棚7本のコの字型タイプ

   下図(J)は、ついに本棚9本に達した場合の一例である。現在の私の書斎には、この
  変形タイプに近い形で9本の本棚が並んでいる。数年前ようやく自宅を新築し、最後に
  増設した2本の本棚を、これまで作って並べて来た本棚の「余った壁面長」にピッタリ
  収まる寸法でこしらえて、長年の憧れだった「壁一面の本棚」をついに我が物とした。
f6bk09a.jpg
図(J) 本棚9本、私の書斎に近いタイプ

   同一寸法の本棚を作り続ける…という観点では、言ってることとやってることが全然
  違うのは恐縮だが(^_^;)、これはまぁ「自宅新築」という人生のビッグイベントに伴う
  特例だとご了承願いたい。それが証拠に、少なくともこの9本「だけ」に限って言えば
  私は今後私が死ぬまでの一生、この9本はどこにも移動させず、我が書斎の壁面に君臨
  させ続けるつもりである。

 ■ 興味深い「くし型」配置

   一方、ここで述べておく必要があるのは、下の図(K)の並べ方であろう。ご覧の通り
  2本の本棚を「背中合わせ」にして全体を「くし型」に配置することで、より効率的に
  本棚を並べる方法だ。これなら僅か「畳2畳分」のスペースに本棚9本を並べられる。
f6bk09b.jpg
図(K) 本棚9本、くし形タイプ

   しかも、こういう並べ方をした場合、くし型の「歯」に相当する部分の本棚の上段を
  スチール製アングル材などでお互い連結すると、本棚の全体がひとつの「巨大な塊」と
  なって耐震性能が飛躍的にアップする(だろう)というメリットも考えられる。

   この並べ方は、実に興味深い。確かに見た目には「圧迫感」がひどいだろうし、本の
  背表紙を一望出来ない、という意味でもその採用には慎重を要するが、最初から特定の
  部屋を「書庫」のように使う覚悟なら、一度は検討してみる価値もあると私は思う。

   この場合「くし」の幅は少なくとも本棚1本分、すなわち最低600ミリ程度以上は
  確保すべきだろう。そうしないと向かい合った本棚の間に身体を潜り込ませて本を取り
  出す時に、目的の本に素早くアクセス出来ないと思われる。

 ■ さらに妄想を逞しゅうすると…

   調子に乗ってさらに「イメージ図」を描き続けていくと、ついに我々は下図のような
  配置方法に辿り付くことになるかも知れない。

   「畳6畳分」のスペースでも、無理矢理本棚を押し込んで行けば「理論上は」こんな
  並べ方が可能だろう…という一案である。図(L)で本棚が15本分、図(M)の場合なら
  実に本棚20本分!である。棚板総延長は100メートル近くに達するから、これだけ
  あれば、通常の本好きが一生の間に買い漁る本のすべてを収納することも決して夢では
  ないのではなかろうか?
f6bk15a.jpg
f6bk20a.jpg
図(L) 本棚15本、図書館タイプ
図(M) 本棚20本!、書庫タイプ

   もちろん、こんな書庫を「建設」するつもりなら、その計画は当初から慎重に進める
  必要があるだろう。何より重視すべきは床面の「耐荷重」で、こういう並べ方の場合は
  部屋の中央部で本棚の重さがモロに効いてくるから、床下からの「耐荷重」考慮も必須
  条件となるはずだ。

   残念ながら、現時点での私には、このような書庫「建設」に関する清く正しい知識と
  経験がない。ただし、いずれ将来は図(M)に相当する書庫を持ちたいと考えているので
  それが実現したらその時点で、改めて蘊蓄からご披露したいと思っている(^_^)。

 ■ 人生は長く、住まいは変わる

   最初の2本の並べ方に始まり、その後の本棚増設過程のバリエーションを、私自身の
  経験や思い出も交えてお話してきた。最後は多少「妄想」に近い部分もあったが(^_^;)
  同じ外観寸法で「規格化」された本棚を作れば、様々な部屋とライフスタイルの変化に
  応じて柔軟な対応が可能…ということだけは、ご理解頂けただろうと思う。

   あなたの蔵書が1000冊以下なら、最初は何ひとつ焦る必要はない。2本の本棚を
  作って、静かに「自作本棚」とのお付き合いを始めれば良い。そして本棚から本が溢れ
  始めてきたら、その時点で以前と同じ大きさの本棚を作れば良いのである。そうすれば
  いつの日にか必ずや、あなたの目の前に巨大な「システム本棚」が現れることだろう。
  そしてそれを可能にするのは、やはり「自作本棚」以外に有り得ない!と私は確信して
  いる。ここで私が強調したいのは、

    人生は長く、住まいは変わる。そして本は、確実に増え続ける…。

  ということなのだ! 古今東西、現在過去未来、あらゆる先人これからの文明、そして
  森羅万象の叡知と業を「本」というモノから吸収していく限り、それは仕方のないこと
  なのである。なぜならば、大袈裟に言えばそれこそが、あなたが「生きていく」という
  ことと同じ意味なのだから…。

   意識する、しない、にかかわらず、あなたを含めそれが「本好き」と呼ばれる人々の
  宿命であるならば、我々は「清く正しい本棚」を作り続けるべきなのである。


 6-4.おわりに

   長々と述べてきたけれども、本稿「清く正しい本棚の作り方」も、ようやく終わりが
  近づいて来た。

 ■ 一度作れば50年は使える「清く正しい本棚」

   学生時代から集め始めた趣味本の整理に困り、私が初めて2本の本棚を自作したのは
  独身時代の20代前半のことである。その後少しづつ本棚を作り続けて、気がついたら
  壁一面が本棚で埋まっていた! もちろん、当初から明確な「計画」があったわけでは
  ないのだが、いつかはこうなるだろうという「予感」だけはあったような気もする。
02072102.jpg

   ある日、私が部屋の「模様替え」で大汗をかきながら本棚を移動していた時、それを
  見ていた長女が1本の本棚の陰で笑い出したことがある。彼女が指差す本棚の裏板には
  その本棚の「完成年月日」とともに「製作協力者」として私の妻の名が、そして「製作
  妨害者」として生後3ケ月の長女の名も記されていたからである。「失礼ねぇ」と苦笑
  していたその長女も、今やすでに二児の母親となってしまった!(^_^;)

   このように、これまで私が作ってきた本棚はすべてが今でも「現役」である。そして
  それらはこれからもずっと「現役」であり続けるだろう。「清く正しい本棚」とは一度
  作れば「最低50年は使える」本棚なのである。本当は「100年でも使える」と豪語
  したいところだが、残念ながらそれは「もはや私が生きているうちには」ちょっと証明
  することが出来そうにない。多少、控え目に主張してみたのがこの数字なのである。

   もしもあなたが20代の若者ならば、私と同じように、2本の本棚を自作するところ
  から始めてみて欲しい。確信を持って断言するが、その本棚はあなたが死ぬまでの一生
  必ずやあなたの「人生の財産」として活躍してくれることだろう。

 ■ あなたにも必ず本棚は作れる!

   第1章「蘊蓄編」でも述べたことだが、最後にもう一度だけ申し上げておきたい。

   世の中で「本棚を自作する人」は圧倒的に少ない。しかし、だからと言ってあなたに
  本棚が自作出来ないわけでは断じてない! 誰にでも必ず本棚は自作出来るのである!

   これまで長々と述べてきた製作方法も、振り返ってみれば何ひとつ複雑怪奇なことは
  していない。一言で言うなら「建具屋に切ってもらった材料を、木工ボンドと木ネジで
  締め上げただけ」である。もし自作することを躊躇している人がいたとして、その人が
  仮に市販品の本棚を購入したとしても、その商品が「お客さま組み立て方式」だったと
  したら、その人は結局ほとんど同じ作業を強いられることになるのではないか? そう
  考えれば、途方もなく大変そうに思われる「本棚の自作」も、実は全然大したことでは
  ないことに気付くだろう。

   「塗装作業」にしても然りである。第5章冒頭で、私は「塗装工程にはこれが絶対に
  正解という手順は無いと思う」と書いたが、私があそこで紹介した方法は、あくまでも
  本棚という「実用品」にペンキを塗る時のコツを長年の経験から思い付くまま羅列した
  だけである。専門家から見れば、まだまだ書き足りない有用な情報もあるに違いない。

   しかし、私自身も皆さんと同じ「素人」の一人であり、その素人が長年に亘り何度も
  ペンキを塗ってきて、曲がりなりにも実用品足り得る本棚を完成させているわけである
  から、そう考えれば「塗装作業」もこれまた特殊なスキルを必要とする作業ではないと
  いうことが判るはずである。

   必要なことは、ちょっとした「きっかけ」と「本を愛する気持ち」に尽きるだろう。
  そして、すでにあなたには人一倍「本を愛する気持ち」がお有りのはずである。あとは
  この「文字数を揃えた準文節改行スタイル」で書いた長くて臭いだけの駄文が、これを
  最後まで熱心に読んで下さったあなたにとっての「きっかけ」となれば、筆者としては
  まさしく望外の喜びである。
05111206.jpg

   今後一人でも多くの方々が、私と同じように「清く正しい本棚作り」にご挑戦なさる
  ことを私は心の底から願ってやまない。

   最後までお読み下さいまして、誠に有難うございました(^_^)v。

清く正しい本棚の作り方 (完)
Copyright (C) 2001-2019 (TT) 戸田プロダクション



[戻る]  [目次を表示する]  [第5章「塗装編」へ]  [番外章「資料編」へ]